11月20日(木)20:00~ 背中家腰楽の落語講座がございます。
前回のお話は「井戸の茶碗」でした。
登場人物が善人ばかりで嫌なところが無いと、人気の高いお話です。
しかし以前、この話は最後で嫌な気持ちになると話してくださった方がいます。
終盤の場面で、女性がお金と交換されているようで気分が悪くなると。
良い人ばかりが出てくるだけに、そこが目立つと仰るのです。
なるほど、これは暢気にしていてはいけません。
常識は時代と共に変わります。
昔の価値観ではあたりまえのことでも、今では非常識なんてのがいくらもあります。
誰かの「不快」が誰かの「快」なんてこともあるわけですが、
初めての落語で嫌な気持ちになったら、色々といけません。次は無いですし。
そこでアタクシは古典落語においては「江戸時代」という装置
をきちんと発動させることを心掛けています。
心置きなくお話の世界を楽しんでもらうために、観客と
お話の「距離」の調整装置としての「江戸時代」。
つまり「今の話」となると不快で受け入れがたいけれども、
「(江戸時代の)昔の話」なればこそ受容出来ると。
「江戸時代の話」として伝わるためには、
江戸のことばや武士のたたずまいが、それらしいものになっているかどうか、
細部に気をつけなくてはなりません。
そうしたセオリーに加えて、
「初めて聞いた人が江戸時代の話だとみなすことが出来るお話」
を更新し続ける必要があります。
時が経つにつれて(そして世代間によっても大きく違う)
「江戸時代のイメージ」は変わっていくのですから。
後は演者の意識も大事なんでしょうね。
自分の言葉が、自分の心のどの部分から、どの深さから発せられているのか。
見ている人の心の同じところに響いても大丈夫なのか。
今の話に改変することで遠くなる話。
江戸の話にすることで近くなる話。
演者と噺、演者と観客。
つくづく「距離」を大事にしなきゃあいけないなあ、と勝手に思っております。
と、毎度おなじみのややこしいお話をしたところで講座のお知らせ。
今月のお話は「廓噺」でございます。廓噺とは遊廓での遊びにまつわるお話。
有名な吉原を「北国(ほっこく)」、品川を「南(みなみ)」なんていいまして、
東海道第一番の宿駅である品川は、遊びの場として大変栄えたそうでございます。
そんな品川で起きる騒動を描いたお話。
また今回はお話の中で昔の遊び「おいちょかぶ」の場面が描かれます。
おいちょかぶはブラックジャックの日本版といえる遊び。
写真は任天堂の『株札』
というわけで今月も講座終了後にお楽しみイベントを開催予定です。
(手が後ろに回ることはありませんからご安心を)
背中家腰楽の落語講座では
「落語はちょっとむずかしそうで…」という方も、
「あらかた知っているよ」という方も、
よりお楽しみ頂けるように
レジュメ、プレゼンテーション付きの落語をやらせて頂いております。
この記事を書いた人
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岡崎北高等学校卒。 兵庫県立姫路工業大学理学部生命科学科を経て、 平成7年落語家、古今亭志ん朝に入門。 古今亭志ん一と命名される。 無痛整体創始者のもとで7年間修行後、平成16年愛知県岡崎市にて「杉田整体院」を開院。 背中家腰楽として、 落語と健康の講座も開催中。
ブログ『だいたい医療、ときどき落語』
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