ペットシッターの春名です。先日、2月度の読書会が開かれました。今回は残念ながら人があまり集まらず、僕ともうお一方のみという、なんと二人きりの読書会となりました。このまま二人だけだったらどうしましょう、などと笑いながら雑談を始めていたら、そのまま1時間半以上、話し込んでいました。
雑談はいつか課題図書の話へとつながり、内容について深く話をすることができました。人数がすくないぶん、しっかりとそれぞれの意見を言い尽くせた気はします。今回の課題図書「11 eleven/津原泰水」については、誰でもすらすら読めるような小説というわけにはいかず、ややとっつきにくい面もあったようです。ただ、しっかり読んでみると、味わい深い作品集だということで意見は一致しました。作品ごとの雑感を僕なりにまとめると、以下のような感じです。
・「五色の舟」…最もわかりやすくキャッチーで、面白い。
・「延長コード」…主題となる延長コードを娘が持っていた理由が明かされず、不条理ではあるが、それでも読ませる力のある作品。
・「琥珀みがき」…最後の一文「でもきっと、私には何もくれない」の意味は何? そして突然出てくる「私」とは誰? ほのぼのした話が、最後に急カーブを描いて終わる。明かされないところは読者が補い、そこに深みが生まれる。
・「手」…オーソドックスな怪異譚として面白い。ただ、僕としてはラストがやや平凡かとも思う。
・「クラーケン」…グレート・デンという犬の名前がクラーケンだ。ペットシッターとしてグレート・デンは扱ったことがあって、扱ったうちでダントツ最大の犬だった。少女の行動がミステリアス。そして、この作品もラストの解釈が人それぞれに違う。
・「テルミン嬢」…僕としてはとても面白く読んだが、かなりストレートなSFでもあるので、設定部分でついていけない読者がいるのも事実。
今回、短編集ということで、しかも様々なテーマや文体が入り乱れる作品集ということもあり、どれか一つは気に入る話がある反面、どうしても読めないという作品もあったようです。特に著者の出自というかベースにあるのがSFなので、あまりに純粋なSFだと設定の読解が難しく、読みづらいという話が出ました。それでも、おおむね気に入ってもらえたようでよかったです。課題図書の話のあとは、読書全般に関する話から、生活観、人生観にまで話はおよび、あっという間に時間が過ぎていました。
それでは、次回の読書会は3/4(金)20:30となります。課題図書は、『「やりがいのある仕事」という幻想/森 博嗣』です。次回はぜひ、たくさんの方のご来場をお待ちしています!
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読書会メンバーの中では年長組に入りますが、毎回とても楽しく過ごさせてもらっています。スロース読書会は、人付き合いもおしゃべりも得意ではない僕さえ包み込んでくれる、心地のよい居場所なのです。
ブログでは、読書会関連として、本の話題を中心にお届けする予定です。ただ、極端に遅読なため、最新本は扱えません。僕のお気に入りの本を、なんとか現代の話題とリンクさせ(ることを目標にし)つつ、映画やその他の話題にも触れていきたいと思っています。
ちなみにペットシッターとは、飼い主さんのご自宅で、ペットのお世話をする仕事です。1967年、兵庫県に生まれ、名古屋での25年を経て、岡崎にたどり着いた今。近隣市を駆け回り、いろんなペット達と触れあう、ふかふかな西瓜糖の日々。
・お仕事サイト「ペットシッター・ジェントリー」
・Facebook(お仕事用)
・個人サイト「Sea Lion Island」
・Facebook(個人用)
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