ペットシッターの春名です。8月頭に引っ越しをしたのですが、7月半ばから準備に追われ、引っ越し当日はもちろん、その後も諸事に忙殺され、それが一段落つく頃にお盆の繁忙期に突入し……と、一ヶ月ほど落ち着く暇がなかった気がします。ここにきてようやく、読書会の準備にかかることができました。9月の読書会は私が進行役担当ですので、すこしご紹介をしてみたいと思います。
■『海と毒薬』遠藤周作
時は太平洋戦争のさなか。九州北部にある大学病院に勤める勝呂(すぐろ)は、日々の生活に倦怠を感じていた。物資不足のために満足な治療ができず、患者は次々と死んでいく。教授や助手達は出世抗争に余念が無く、命の尊厳は軽んじられていた。病院で息を引き取らなくても、夜ごとの空襲でたくさんの人が亡くなっていく。この先どうなるのかという希望は、持つことさえ無意味に思えた。そんなあるとき、一人の米軍捕虜が病院に連れて来られる。彼は、軍部と病院の癒着のために仕組まれた人体実験の被験者だった。自分はこの“人殺し”に荷担すべきなのか。思い悩む勝呂に同僚の戸田は、「誰だって死ぬ時代だ。医学の進歩のために亡くなるなら、意味ある死じゃないか」と告げる――。
戦時中、九州大学で実際に起きた生体解剖事件を元にした小説です。内容は事実とはかなり異なるため、ドキュメンタリー要素はほとんどありません。理由があれば人を殺すことは許されるのか、生命の尊厳とは何か、日本人とはどういう人々なのか。ショッキングな題材の中に、様々なテーマが詰まっています。純文学の部類に入る作品ですが、エンタテインメント的に読みやすく書かれているため、難しいところは何一つありません。
ただ、かなり古い小説ではあります。発表されたのは1958年ですから、50年以上も前の作品ですね。なので、ちょっとした日常描写にも今の読者には違和感だらけかもしれません。風呂は銭湯に行くのが普通だったり、煙草は自分で手で巻くものだったり。シャボン、中支、市電、珈琲店、という言葉にも時代を感じます。
著者の遠藤周作さんは、49歳の僕の世代からすれば、学生時代にはかなりの人気作家でした。今はどうでしょう、若い方にはなじみが薄いかもしれません。代表作の『沈黙』『深い河』あたりが読み継がれているくらいでしょうか。僕も昔は好きでよく読んでいましたが、最近は遠ざかっていました。それでも本作は何度も読み返し、そのたびに感銘を受ける小説です。ブックオフなどでもよく見かけますし、文庫本で170ページほどの文量なので、これからでもすぐに読めると思います。読書会は、9月2日(金)の20:30から開催されます。ぜひ、たくさんのご参加をお待ちしています。
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読書会メンバーの中では年長組に入りますが、毎回とても楽しく過ごさせてもらっています。スロース読書会は、人付き合いもおしゃべりも得意ではない僕さえ包み込んでくれる、心地のよい居場所なのです。
ブログでは、読書会関連として、本の話題を中心にお届けする予定です。ただ、極端に遅読なため、最新本は扱えません。僕のお気に入りの本を、なんとか現代の話題とリンクさせ(ることを目標にし)つつ、映画やその他の話題にも触れていきたいと思っています。
ちなみにペットシッターとは、飼い主さんのご自宅で、ペットのお世話をする仕事です。1967年、兵庫県に生まれ、名古屋での25年を経て、岡崎にたどり着いた今。近隣市を駆け回り、いろんなペット達と触れあう、ふかふかな西瓜糖の日々。
・お仕事サイト「ペットシッター・ジェントリー」
・Facebook(お仕事用)
・個人サイト「Sea Lion Island」
・Facebook(個人用)
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