9月度読書会のお知らせ.ブルース・リー先生の言うとおり

車輪の下

★ 喫茶スロースからお知らせです★

さっぺりぽぺっとさんのケーキ・キッシュのセットは本日8/30は予約でいっぱいになりました。

どうぞ宜しくお願致します。

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ペットシッターの春名です。いよいよドイツ旅行のお話ができるかと息巻いていたのですが、読書会も近くなって参りましたので、言い出しっぺの責務としてそちらを優先させなくてはなりません。というわけで、9月の課題図書「車輪の下」について、もうすこし掘り下げてみたいと思います。

海外の翻訳ものというと、独特の言い回しと、文化や自然環境・生活環境の違いにより、描写されている内容がよくわからないという障壁があります。本作であれば、まず神学校や州試験の存在がぴんと来ませんし、神学校に入って牧師になることが最良の道だとする考え方もよくわかりません。その他、社会の仕組みや価値観、とくにキリスト教的な生活と価値基準が、時代も国も違う僕らには理解しづらいものとなっています。

じゃあ、自分に関係がないから読む価値がないかというと、そうではありません。むしろ、ここにこそ小説を読む醍醐味があります。自分とまったく関係のない世界に入り、それを疑似体験する。小説ならばまったく別の人生を生きることができるわけです。そして、優れた小説や映画は、物語世界を超えた普遍性を備えています。たとえば、本作の主人公ハンスと僕との間に現実世界で接点はなく、共通点は何もありません。それでも、この小説を読むことで、日本の岡崎市に住む48歳でペットシッターの僕の人生にも、何かしらの影響を与えてくれるのです。これってすごく不思議で、素敵なことだと思いませんか?

本作を含む海外文学のもう一つの特徴としては、緻密な自然描写が挙げられます。とくにヘッセは詩人でもあるため抽象的な表現が多く、比喩の美しさ・多彩さが目を惹きます。昨今のミステリ小説などでは、物語の推進力を優先させるあまり、場面場面の描写や比喩は最低限に抑えられています。ほとんど描写をしない小説だってあります。詳しく描写をしていると展開がとどこおってしまうからです。ところが本作では、たっぷりとした自然描写が展開されます。読み慣れないうちは戸惑うかもしれませんし、描写の一つ一つを、あまり根詰めて「これは何だろう、どういうことなんだろう」と考えすぎると、かえって退屈でわけがわからなくなります。ここは、かのブルース・リー先生が教えてくれたとおり、「Don’t think. Feel!(考えるのではない。感じるのだ)」の精神でいきましょう。文章にただ身をまかせ、その響きを楽しんでいけばよいのです。とはいっても、わかりづらい小説では全くありませんので、これから読もうと思われる方も安心して大丈夫です。
考えるな感じろ

くわえて特筆したいのは、ハンスの気持ちが明るい時には明るい風景に、暗い時には暗く沈んだ風景として描かれる点です。つまり、ただ回りの風景を読者に伝えるだけではなく、その時の登場人物の気持ちまでが自然に頭に入るように書かれているのです。
風景描写には、登場人物だけでなく作者ヘッセの心情も反映されます。ただ僕は、あまりに作者の主張が強すぎる描写はどうかと思います。作中人物の自然な感情にまかせた描写なら納得できますが、突然に作者の主張が表れてきたりすると、途端にリアリティが崩れ、説教臭いものになってしまいます。本作では、父親や教師に対する不信感や憎しみの表現は、ややヘッセの主張が強すぎるきらいがあります。とくに父親に対する描写は容赦がなく、ほとんど馬鹿にしているとさえ言えるレベルです。そこまで悪く書かなくてもいいだろう、と思われる方がいるかもしれません。

そういえば先回、父親に関するエピソードを抜き出す際には、僕の心情が強く表れすぎたようでした。これこそ悪い見本でした。本当に申し訳ございませんでした。ここに訂正して、最後の展開をこっそりと書いておきます。

学校をやめたハンスに、父ヨーゼフは、落胆しながらもこう告げます。
「おまえは機械工になってみるかな、ハンス。それとも書記のほうがいいか」
突然の問いに困惑するハンスに父親は、
「いや、やっぱり会計士がいいか」
とつぶやきました。するとそこへ、町の牧師とかつての校長先生がやってきて、
「それがいい」
と口を揃えて言いました。校長はさらに続けます。
「ハンス、いまはしっかり体を休めなくてはならない。ただどうだろう、世の中は勤勉で出来のいい会計士ばかりだから、1日に1時間か、せいぜい2時間ほど予習をしておいてはどうだろうか」
すると牧師も
「それがいい、ほんの3時間か4時間くらいで」
とハンスの肩を叩きます。
「そうだ、ほんの5時間か6時間くらいでいいんだ。ただ、いまの君には休む権利と義務がある。だからその気になったらでいいから、この本を読みたまえ。1日にたった7時間か8時間でいいんだから」
そう言って彼らは会計士の本を20冊ほど置いて帰っていきました。ハンスと父はおそるおそる本のページを開いてみました。
「おとうさん、会計士って何やるの?」
いぶかしむハンスに、父ヨーゼフは取りつくろいながらも答えます。
「そ、そりゃあやっぱり、領収証を書いたりとか……」
「領収証、か」
ハンスは父親に本を読んでもらい、書き方の練習を始めるのでした。ひととおり書けるようになった頃、ハンスは父に聞きました。
社印「それで、自分の印鑑はどこに押すの、おとうさん?」
「印鑑は……」
ヨーゼフは必死で本を繰りながら答えます。
「自分の印鑑はだな、社印の下だ」
「え?」
「四角い、難しい字で彫ってあるのが社印だ。その下に押せばいい」
「え?」
「聞こえただろう。社印の下、だ」
社印の下だね、おとうさん」
「そうだ。もういいよ、と思うかもしれないが、社印の下だ」

……どうも僕の手元にある本が古いため、別の作品だったかもしれません。というよりこんなことばかり書いていると怒られそうなので、とにかく読書会の告知をしておきます。もう次の金曜日に迫ってきました。次回の読書会は、9月4日(金)20:30より、喫茶スロースにて開催します。読書会の雰囲気だけ味わいたい方には、観覧席も設けてありますので、是非たくさんの方のご参加をお待ちしています!

それでは、愛に生き、恋に泣いたドイツ旅行のお話は、次回こそは必ずご紹介したいと思います。

この記事を書いた人

春名 孝
春名 孝本と動物と珈琲好きのペットシッター
読書会メンバーの中では年長組に入りますが、毎回とても楽しく過ごさせてもらっています。スロース読書会は、人付き合いもおしゃべりも得意ではない僕さえ包み込んでくれる、心地のよい居場所なのです。

ブログでは、読書会関連として、本の話題を中心にお届けする予定です。ただ、極端に遅読なため、最新本は扱えません。僕のお気に入りの本を、なんとか現代の話題とリンクさせ(ることを目標にし)つつ、映画やその他の話題にも触れていきたいと思っています。

ちなみにペットシッターとは、飼い主さんのご自宅で、ペットのお世話をする仕事です。1967年、兵庫県に生まれ、名古屋での25年を経て、岡崎にたどり着いた今。近隣市を駆け回り、いろんなペット達と触れあう、ふかふかな西瓜糖の日々。

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