ドイツ文学考.ただし後半は無視してください

シャア

ペットシッターの春名です。ワンちゃんの散歩が厳しい時期になりました。個人的には、雨でも構わないので涼しいほうが嬉しいです。カッパを着て散歩をするのも、違った風景が見えておもしろいですよ。

さて、前回お伝えしたとおり、春のドイツ旅行の話をしようかと思ったのですが、やはり読書会関連ブログですので、先にすこし、読書会的にドイツを考えてみることにしました。
ハイネ詩集 (新潮文庫)ドイツ文学というと、英米やフランス文学に比べ、ややなじみが薄い気がします。(一般に「ドイツ文学」というと、ドイツ人作家だけでなく、オーストリアやスイスなども含むドイツ語で書かれた作品全般を指すようです。)どちらかといえば日本では小説家よりも、リルケ、シラー、ハイネといった詩人のほうが名が通っているのではないでしょうか。僕は詩にはまったく疎いので、ハイネと言われても、「四季の歌」が静かに聞こえてくるだけですが。

近年でお勧めなのは、フェルディナンド・フォン・シーラッハというミステリ作家です。ごく短い物語の中で人間の得体の知れなさ、どうしようもなさを描いた短編集「犯罪」は、すいすい読めるのに読後感はずっしり長編級で、おなか一杯になります。長編「コリーニ事件」のほうは、謎解きと共に法廷劇としても楽しめます。コリーニ氏が何故に残虐な殺しをするに至ったのか。最後に明かされる謎は胸を打ちます。
犯罪 コリーニ事件

風立ちぬ [DVD]意外なところでは、宮崎駿の映画「風立ちぬ」に、ドイツが関わっています。主人公の二郎と菜穂子が再会する、軽井沢の高原ホテル。ここで出会うカストルプというドイツ人が、「ここは魔の山です」と謎の言葉を告げます。このあたりが、トーマス・マンの小説「魔の山」からの引用になっています。「魔の山」の主人公の名前も同じカストルプで、サナトリウムを舞台にしているところも重なります。
カストルプのピアノに合わせ、二郎と菜穂子の婚約を祝して合唱する歌は、1931年のドイツ映画「会議は踊る」の挿入歌です。劇中ではまったく説明がありませんが、これは「ただ一度だけ」という曲で、はかない夢物語と知りながら愛する人のもとへ嫁ぐ街娘の歌です。「風立ちぬ」の菜穂子も同じく、治らない病気と知りながら二郎との結婚を決意します。この映画で僕がボロ泣きするシーンの一つです。

ところで、もちろん僕などは読書会メンバーですから、トーマス・マンと言えば他にも名作「ベニヤにニス」を知っていますし、ドイツ文学と言えばさらにヘッセの「車輪の舌」、カフカの「返信」、ミヒャエル・エンデの「桃」、「はしたない物語」など、すらすら作品名が出てくるわけです。

ニーチェの「タラとイクラはかく語りき」などは、サザエさんの舞台裏をつづった軽い読み物として、何度読んだかわかりません。それからギュンター・グラスの「ブリキのタイコ」。こちらもサザエさんからのスピンオフ企画、ノリスケの妻タイコとブリキで機械化されたタイコが戦う「タイコ対メカタイコ」として、来年春に劇場公開予定です。

他にも、「愛を読むひと」として映画化もされたベルンハルト・シュリンクの「朗読シャア」。世界の名作をシャアが朗読したらこうなる、という実録本です。例えば太宰治の「斜陽」の章。なにせシャアですから、愚行をくりかえす弟に対し、何故、とかず子が問いかけるシーンで、「坊やだからさ」と言い放ちます。また、エコロジストでもあるシャアは、草花が汚されるのが我慢できず、お母さまが草むらで立ちおしっこをする場面で、「させるかぁ~」と憤ったりします。それでいてシャアも男の子ですから、かず子と上原が遂に抱き合うシーンでは体の一部が反応してしまい、顔を赤らめながら「認めたくないものだな……、自分自身の……若さ故の過ちというものを……」と吐露するのです。最後に一家揃って落ちぶれていく様を読みながら、「生まれの不幸を呪うがいい」と突き放して本を置きます。なにせシャアですから。
シャア名言集

というわけで、あまりに暑いせいで頭がぼおっとしています。文句がある人はかかってきなさい(笑)。次回こそは、ドイツ旅行のお話をしたいと思います。

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春名 孝本と動物と珈琲好きのペットシッター
読書会メンバーの中では年長組に入りますが、毎回とても楽しく過ごさせてもらっています。スロース読書会は、人付き合いもおしゃべりも得意ではない僕さえ包み込んでくれる、心地のよい居場所なのです。

ブログでは、読書会関連として、本の話題を中心にお届けする予定です。ただ、極端に遅読なため、最新本は扱えません。僕のお気に入りの本を、なんとか現代の話題とリンクさせ(ることを目標にし)つつ、映画やその他の話題にも触れていきたいと思っています。

ちなみにペットシッターとは、飼い主さんのご自宅で、ペットのお世話をする仕事です。1967年、兵庫県に生まれ、名古屋での25年を経て、岡崎にたどり着いた今。近隣市を駆け回り、いろんなペット達と触れあう、ふかふかな西瓜糖の日々。

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