5月度喫茶スロース読書会「女のいない男たち」①

こんにちは。

ドリーミー刑事です。

 

村上春樹と言えば、都会的で、それでいて濃厚な文体が特徴です。

というわけで今回は、「もしも村上春樹の小説の主人公がスロースのお客さんだったら」という会話を、この文体で表現してみました。

 

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「やれやれ」

僕はいささかうんざりしながら尋ねた。

「なぜ、読書会なんてものをやるんだろう?」

 

 

その時僕は、海沿いの小さな喫茶店にいた。

カウンターの向こう側では、ひっそりとターンテーブルが回っている。

1950年代のTal Farlowのギター。クールネスと控えめな親密さを兼ね備えた音楽だ。

 

「読書は、ある種のイニシエーション性を伴う、極めて個人的な経験だ。その感想は、心の中の黒くて重い、分厚い扉に大きなダイヤルがついた金庫に大切にしまっておくべきじゃないのかな」

 

 

隣に座る女性が、ほうじ茶ラテを一口飲み、大きな真珠のようなチョコレートを齧った後、口を開く。

 

「ダイヤルのついた金庫?今どきそんなもの、古ぼけた銀行にしかないわよ」

 

よく見れば、美しい曲線を描く、チャーミングな横顔の持ち主だ。

 

「問題は、本じゃないの。喜びを他の誰かと分かち合う。それだけがこの世の中を熱くするということが大事なのよ」

 

初めて会った彼女の言葉は、まるでフランスの石畳を走り回る古いルノーのような、オーセンティックな力強さを思い起こさせた。

 

「ねえ。今夜僕の部屋にこないか?美味いスコッチと、何枚かの素晴らしいレコードがあるんだ。それに、」

 

「それに?」

 

「君ともっと話をしたい。もっとよく知りたいんだ、読書会について」

 

彼女は小指を噛んで、少しだけ考えてから言った。

 

「いいわよ。久しぶりに私のレゾンデートルにも会いたいし」

 

レゾンデートル。悪くない。僕らはきっと、ヘルシンキの夜に降る、静かな雨のような時間を過ごすのだろう。

 

「でも、その前に大番揚げが食べたいわ」

 

こうして僕とノロ子は、会計を済ませ、店を出た。

 

-続く-

 

 

-5月度喫茶スロース読書会-

日時:5月23日(金) 20:30~22:00くらい

 

会費:1000円(1ドリンク付き)

 

課題図書:村上春樹著 『女のいない男たち』

 

-ドリーミー刑事のブログ-

ドリーミー刑事のスモーキー事件簿:http://dreamy-policeman.hatenablo

 

この記事を書いた人

ドリーミー刑事
ドリーミー刑事喫茶スロース読書会広報係Twitter:@slothcoffeebook
ドリーミー刑事(会社員)
スロース読書会の常連。
日々、古今東西の素敵でキャッチーな音楽を追い求める夢見みがちなおっさん。B型。犬が好き。

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