ペットシッターの春名です。5月の読書会はお休みしてしまいましたが、6月にはまた私がホストを務めさせていただきます。今回の課題図書はいつもとすこし毛色を変えて、小説でもなく啓蒙本でもない、エッセイを取り上げてみました。とても読みやすく文量もすくないので、すぐに読めると思います。
よく間違えられるのですが、『旅をする本』ではなく、『旅をする木』です。著者の星野道夫さんはアラスカ在住の写真家で、1996年、ヒグマに襲われて亡くなりました。写真家の本というと、写真が掲載されたうえでエッセイも併録されるのが普通ですが、本書はエッセイのみで構成されています。星野さんの文章はそれくらい読みごたえがあります。とはいっても、難しいことや、変にこねくり回したような小説家気取りの文章は何も書かれていません。実に自然で優しく、それでいて深みのある文章なのです。
生き生きとした自然描写は、星野さんが自然を愛し、自然と人間の関係を常に考えていた証です。アラスカに住み、マイナス何十度の寒さの中で生きる暮らしというのは、格好いいとかロマンチックという言葉では済まされない、過酷なものだと思います。そうして文明と距離を置き、情報と距離を置く中で、我々の見つけ得ない大切なものを示してくれます。
孤独とは何か、自由とは何か、自然とは、人間とは、生とは、死とは何か。人が生きていくうえで避けられないこうした問題に対し、星野さんは簡単に答えを与えるのではなく、様々なエピソードを通して優しい声で語りかけてくれます。その声に耳を澄ませるうち、僕らは自分の問題への答えを自分で導き出している、そんな気にさせてくれる本です。
僕はこの本が大好きで、これまでに何度も何度も読み返していますが、読むたびに新しい発見があります。旅行に持参し、現地で読むこともあります。人生の様々な時期に、その時その時の自分に大事なものを与えてくれる本です。今回、そうした思いを皆さんと共有できればと思っています。読書会は、6月3日(金) 20:30より開催されます。ぜひ、たくさんの方におこしいただければと思います。
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読書会メンバーの中では年長組に入りますが、毎回とても楽しく過ごさせてもらっています。スロース読書会は、人付き合いもおしゃべりも得意ではない僕さえ包み込んでくれる、心地のよい居場所なのです。
ブログでは、読書会関連として、本の話題を中心にお届けする予定です。ただ、極端に遅読なため、最新本は扱えません。僕のお気に入りの本を、なんとか現代の話題とリンクさせ(ることを目標にし)つつ、映画やその他の話題にも触れていきたいと思っています。
ちなみにペットシッターとは、飼い主さんのご自宅で、ペットのお世話をする仕事です。1967年、兵庫県に生まれ、名古屋での25年を経て、岡崎にたどり着いた今。近隣市を駆け回り、いろんなペット達と触れあう、ふかふかな西瓜糖の日々。
・お仕事サイト「ペットシッター・ジェントリー」
・Facebook(お仕事用)
・個人サイト「Sea Lion Island」
・Facebook(個人用)
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