初めまして、春名と申します。いつも読書会に参加させて頂いており、そのご縁でこちらに書かせて頂くこととなりました。本の話題を中心に、ときには映画や、ペットシッターの仕事についても触れていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。
さて、5月の読書会もたいへん盛況で、課題本「女のいない男たち/村上春樹」について熱い議論が交わされました。そんななか、ふとSさんが呟きます。
「……結局これは、ソフトなエロ本ですか」
爆笑の渦のなか、僕は頭を巡らせていました。たしかに「シェエラザード」あたりではそれなりの性描写はありますが、とくに過激だったり扇情的だったりという印象はなく、どちらかといえば雰囲気を匂わせる程度の描き方が多いように感じます。直接表現を避けるのは照れとも逃げともとれますが、そこがおしゃれで文学的だとも言えます。
その後、この本よりよほど過激な作品があるんじゃないかと考えてみたところ、まず浮かんだのがこれでした。
・「雪国/川端康成」
意外に感じられるかもしれませんが、本作にはかなり18禁な内容が含まれています。読書感想文の課題になることもあるようですが、僕なら強く反対しますね。だって、雪国へ向かう列車の中で、主人公の男が自分の指を見つめて過去の女を思い出すわけですよ。
「この指が、あの娘の……」なんて言いながら触感を思い出したりするわけですよ。
本作に出てくる島村という男、仕事もしないのにやたら女にもてるところは春樹作品と重なりますが、そこでもうひとつ印象的なシーン。温泉芸者の駒子(島村の来ない間は他の男と関係を持っている)が島村と戯れながら、ふいに彼の手を自分の胸に導きます。
「片方が大きくなったの」無邪気にそんなことを言い出す彼女に島村は、「その人の癖だね。一方ばかり」と返します。彼女の相手の男が、利き腕のほうばかりで触るのでしょう。
さらに、「両方平均にって、今度からそう言え」と島村が言うと、「平均に? 平均にって言うの?」なんて女が答えます。昭和のバカップルです。まあ無邪気で健康的だとも言えますが、この直後、家のまわりでガマガエルが鳴きはじめ、それが彼らの情交の暗喩となるような文学性も湛えていて、なかなかにやっかいな小説です。
ところで有名な冒頭のカマシですが、「国境の長いトンネルを抜けると、そこは雪国であった」と覚えている人、いませんか?(僕もそうでした。) 「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」が正解で、「そこは」なんて入っていません。けっこうあっさりしているんですね。
ということで、初回からなんだか下のほうへ走る話になってしまいましたが、村上作品を語るうえで避けられないということでお許しください。ちなみに川端康成で言えば、「眠れる美女」というさらにぶっとんだ作品があります。薬で眠らされた全裸の少女に七十前の老人が添い寝をするという超絶変態小説で、いちおうお勧め(!?)しておきます。
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読書会メンバーの中では年長組に入りますが、毎回とても楽しく過ごさせてもらっています。スロース読書会は、人付き合いもおしゃべりも得意ではない僕さえ包み込んでくれる、心地のよい居場所なのです。
ブログでは、読書会関連として、本の話題を中心にお届けする予定です。ただ、極端に遅読なため、最新本は扱えません。僕のお気に入りの本を、なんとか現代の話題とリンクさせ(ることを目標にし)つつ、映画やその他の話題にも触れていきたいと思っています。
ちなみにペットシッターとは、飼い主さんのご自宅で、ペットのお世話をする仕事です。1967年、兵庫県に生まれ、名古屋での25年を経て、岡崎にたどり着いた今。近隣市を駆け回り、いろんなペット達と触れあう、ふかふかな西瓜糖の日々。
・お仕事サイト「ペットシッター・ジェントリー」
・Facebook(お仕事用)
・個人サイト「Sea Lion Island」
・Facebook(個人用)
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